3月9日三島市民文化会館にて、舘野泉さんのコンサートがありました
舘野泉さんは23年前脳溢血で倒れ、以来左手のピアニストとしての人生を余儀なくされた方です
舘野泉さんの事は、TVのドキュメンタリー番組などで知ってはいましたが、コンサートに足を運ぶのは初めての経験でした
正直期待感もあったけれど、89歳とお歳だし、片腕の割に大ホールだし、委嘱作品ばかりで知らない曲ばかりだし、などと恐れ多くもそれ程期待はしていませんでした
確かに、始まってすぐのバッハのシャコンヌやスクリャービンは、美しい音色や巧みなペダル捌きに感心はしたものの、完成度は今一つな感じがして、こんな感じなのかな?と思っていました
けれど続いて演奏されたノルドグレン作曲の「小泉八雲の怪談による3つのバラード」には、度肝を抜かれました
物理的な音量の大きさもそうですが、迸るエネルギーに圧倒されたんです
又そこからは、舘野泉さんのために書かれた左手のための曲が続いたのですが、そのどれもが素晴らしい演奏でした
そして一曲一曲弾き進むうちに、その瑞々しい感性から紡ぎ出される豊かで多彩な音色に、お歳であることも、ここが大ホールだということも、片腕で弾いていらっしゃることも、全く気にならなくなっていました
それにしても、老いとは一体何なんでしょう
舘野泉さんの演奏を聴いて、何となく解ったことがあります
それは、自分がそれを受け入れなければ、たとえ身体は老いていこうとも、魂は老いることはないという事です
それ程感銘と衝撃を受ける熱い演奏でした
今回これが最後になるかもしれないと思って出かけたコンサートでしたが、舘野泉さんの音色を聴いて、そんなことはないと思えた貴重な時間となりました