祝日の昨日、久しぶりにコンサートに足を運びました。
所は、上野の文化センター小ホール。
演奏者は、ケヴィン・ケナーというピアニストとワルシャワ・ソロイスツという室内楽のメンバー。
演目は、ショパンのピアノコンチェルト第1番とノヴァコフスキのピアノ五重奏op17でした。
小ホールは、すり鉢状の客席と低い舞台で出来ていて奏者ととても近い感覚。
客席数は少ないですが、天井が高く音響効果抜群の空間でした。
今回は室内楽で聴く本当のショパン ピアノコンチェルトという事でしたので、舞台のセッティングも弦楽五重奏の後ろにピアノという独特なもの。
一体どんなコンチェルトになるのかと興味津々でしたが、思いの外ちゃんと(?)ショパンのピアノコンチェルトでした。
確かにオーケストラと比べると物足りなく感じる部分がなかった訳ではありませんが、とても近い場所で聴いたそれは、贅沢なホームコンサートといった感じ。
そして何よりケナーさんの演奏が素晴らしかった!
ケナーさん、かなり大柄な方でしたが、そんな彼の手から紡ぎ出される音色は、只々豊かで美しく、陰影に彩られた演奏は、どこを取っても芸術的、けれどあくまで自然で年齢を感じさせない瑞々しいものでした。
室内楽のどこかホームコンサートを感じさせる演奏にピアノが加わっただけで途端に格調高くなる、そんな圧倒的な演奏でした。
ケナーさんのピアノからオーケストラの響きを感じ取る錯覚さえ起こすくらい・・・
ホールの小ささも良かったのだと思います。
コンチェルトと言えば大ホールですが、もしかしたら小さなホールの方がピアノの音色を楽しめるのかもしれません。
CDだと充分鳴っていたはずのピアノが会場だと今ひとつという事は何度か経験がありましたが、今回はそんな事もなく堪能できましたので、小ホールはピアノ本来の魅力を感じさせる場かもしれないと思いましたし、この形態良い!とも思いました。
しかし一流のピアニストケナーさんも、ピアノを離れると、どこか人柄の良さを感じさせる控え目な方で、一人前に出てお辞儀をするでもなく、すっかり室内楽のメンバー然としていたのが印象的でした。
ケナーさんを知ったのは、私が今回の発表会で弾くショパンの舟歌を検索して聴いていた中で、最も共感を覚える演奏をされていたことからでした。
調べてみると、中村紘子さんの書かれた「 コンクールでお会いしましょう」という本にも出てくる方でした。
と言っても余り名誉な書き方はされておらず、コンクールというと体調を崩し、せっかく抜群の演奏をしていたのに、本選にたどり着く頃にはすっかり疲弊してしまって本領が発揮出来なかった残念な人といった扱いでした。
けれど、かえって優勝を逃した事でマイペースな音楽人生を送ってこられたのではないのかと、昨日の演奏を聴いて感じました。
結果的に何が幸いとなるかは分からないものですね。
で、すっかりケナーファンになった私は、次はソロを聴いてみたい!と切望しているところです。